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CP-800

クラッセがHFCのオフィスにCP-800を納品したとき、期待は相当なものでした。クラッセの営業責任者デーヴ・ノーバーが、「携帯電話とCP-800の組み合わせはいかなるCDプレーヤーにも勝る」と発言し、ハードルを上げていたからです。最も経験豊富な審査員2人もそれぞれ「高価で高性能の各種CDプレーヤーよりも、音楽はUSBで聴く方が良い」と言っています。この画期的なプリアンプは確実にハイファイ史その名をとどめることでしょう。

CP800-0

今年の受賞号の編集作業は心躍る発見の旅でした。2011年には優れた製品が続々と誕生し、中にはひとつのカテゴリーに収まりきれないようなものもありました。そこで、Product of the Yearにこだわるあまりにカテゴリーの「最終選考製品」を切り捨ててしまうのは間違い以外の何ものでもありません。それよりも、各部門の製品はなるべく多く試聴して、ご自分に合った製品を見つけることをお勧めします。購入前に納得のいくまで時間をかけて、じっくり選ぶ。その手間を惜しまなければ結果として末永く満足のいく製品を手に入れることができるのではないでしょうか。

今年の受賞作品の多くには、ハイファイ誌の中でも最も厳しい審査方法、つまりブラインドリスニンググループテストという独自の選考方法が採用されました。一部の製品は「ソロ」審査で受賞候補リストに確実に残る別格のスコアを獲得していました。他の追随を許さずひときわ際立っていた製品もありました。Audiolabの8200のDCとアンプ、LogitechのSqueezebox Touch、MichellのGyro SEターンテーブル等はいずれも傑作でしたが、Product of the Yearをひとつに絞り込まなければなりませんでした。

クラッセのプリアンプCP-800は、HFCのオフィスにセンセーションを巻き起こしました。一部の審査員などは自分の預金残高を確認したほどです。間違いなくProduct of the Yearはこれです。既成概念を打ち破り、優れた音のベンチマークを打ち出し、高価なCDプレーヤーの価値に疑問を投げかけた製品。最高得点はクラッセの製品です。

ジェイソン・ケネディがこの一見シンプルなプリアンプが持つさまざまな特徴の理解に取り組む

クラッセの新しいプリアンプは、旧機CP-700よりも価格は安く機能ははるかに優れています。実際に、これまでにお目にかかったどの専用2チャンネルプリアンプよりも多くの機能を持っています。初心者向けにデジタルとアナログ両方の入力端子があり、そのうちの2つはUSB接続用です。ひとつはフロントパネルにあるAppleデバイス用、もうひとつはバックパネルにある一般コンピュータ用です。それ以外にも2つ目のシステムあるいは別にパワーアンプとサブウーファーを組み込むための出力チャンネルが5つあります。なんと接続だけでもこれだけの機能があるのです。

艶のあるアルミニウムのケースワークの中には低音管理などの技術の粋が詰まっていて、スピーカーの位置やパラメトリックイコライザーのことはほとんど気にせずに低周波数のパフォーマンスを最適に調整することができます。それでも物足りないようでしたら、1970年以降ハイエンドのプリアンプから姿を消していた音質調整器も搭載しています。そのすべてが16:9のタッチパネルに表示されるボタンひとつで操作できます。


どのCDよりも優れている?

CP800-1クラッセの営業責任者デーヴ・ナウバーは、「自分のiPhoneとCP-800を組み合わせた場合、どのCDプレーヤーよりもサウンドが良い」と言いますが、そこがCP-800で最も論議を呼ぶところです。フロントパネルにあるUSBはiDeviceからのデジタルストリームを抽出しますが、そこが争点となっています。HFCがCP-800(そしてその他のクラッセシリーズ)を設計したスコットランド人アラン・クラークと会ったとき 、彼はそれほど強気ではありませんでしたが、「USB入力はパフォーマンスで(それ自体かなり意見の分かれる)S/PDIFを上回ることができる」と主張しました。

アランは「市販されている他のどれよりも優れている」と語るUSB受信装置を開発しました。彼は、真摯なUSB DACメーカーの支持を増やしているアシンクロナス方式は、手ごろな変換器で使われているシンクロナス方式よりも優れていることを認めながらも、そこにさらにひと工夫を加えました。その工夫こそ、CP-800をコンピュータオーディオリンクで世界有数のものにすると言われているものです。クラークは、通常のアシンクロナスUSBインターフェースを「最適ではない」と言っています。なぜなら、コンピュータ音源では避けられないグラウンドノイズが受信装置のクロックとDACを汚染するからです。

これに対する解決策として、彼は、プリアンプ内のオーディオクロックなどすべてを分離する手段として、USBマイクロコントローラー/受信装置とDACの間にFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を加えました。USB受信装置には独自のクロックがありますが、チップの中のノイズのレベルが非常に高いため、完全に分離することは不可能です。FPGAは、入力信号から得られるデータのみを再生し、CP-800内の高精度クロックを用いてジッターを最小限に抑えます。

また、このプリアンプは独自の電源(PSU)を搭載しています。PSUが別のボックスに入っているのではなく内蔵されていることも旧機よりも価格が安い一因となっています。しかし、違いはこれだけではありません。CP-800には、非常に高い周波数で動作するスイッチモードPSUがあります。スイッチモードPSUは、従来のリニアサプライよりもノイズが少ないと言われています。CP-800は(通常の場合)効率も良く、欧州連合(EU)の待機消費電力目標もクリアしています。

また、クラッセでは、電源にかかる負荷を一定に保つ力率補正(PFC)機能を採用していますので、電気の変動に対処する必要がなく、システム内の他のコンポーネントにも良い影響があるはずです。通常、電源を変調する(変化させる)のはパワーアンプと考えがちですが、電源要求(所要電源)がパワーアンプほど大きくないプリアンプでも、同様にこの問題を考慮するとは意外でした。

これほど複雑な製品には珍しく、プリント基板(PCB)の設計はチェンという女性が担当しています。クラークいわく、世界で最も我慢強いエレクトロニクス・デザイナーです。なにしろ、彼女はプリント基板(PCB)の設計をすべて手作業で行っているのです。手作業で行うのは、自動ルーティングでは多層基板の各コンポーネントの作用を勘案すれば本来得られるはずの結果が得られないからです。こうした事情からCP-800のマザーボードの見た目は思ったほど整然とはしていません。信号経路は、回路のノイズが多い部分から遠ざける必要がありますので、見た目はむしろ有機的です。

「ルームバランスに効果がある、いつまでも古臭くならないプリアンプを探しているのなら、まさにうってつけ」

パラメトリックイコライザーは、レコーディングスタジオで見かけるものです。通常よりもかなり正確に音質調整を行う方法で、高音または低音の全体よりはむしろ狭い周波数帯の調整ができます。

70年代、家庭用のアナログのパラメトリックイコライザーはかなり大型でしたが、関係するエレクトロニクスは必然的に信号の邪魔になります。そのため、デジタル時代以前は質が非常に高くなければならなかったのです。

現在、スタジオではソフトウェアベースのイコライザー(EQ)が使われていますが、CP-800にもそれに類したものが搭載されています。低音ブームを引き起こしている周波数を選び、ブームレベルとQを調整して問題を抑制することができます。

その他、部屋の特定の場所にサックアウトがある場合、これらのフィルターを使って希望する範囲全体の信号をブーストすることができます。賢い機能ではあるのですが、デバイスのレゾリューションに影響を与えずに実装するのは簡単ではありません。しかし、システムに無視できない深刻な音調の異常がある場合には、この種のイコライザー(EQ)が大変役に立つことでしょう。

融通の利く相棒

CP-800の構成は見事です。クラッセは、製品設計、そして他機種を上回る仕上げを実現する秘策を心得ています。重厚で艶がありボルトをたくさん使った製品を作る会社は多くありますが、ハイエンド製品を扱っていてこれだけのレベルの製品を世に送り出すことのできる会社はまずありません。CP-800は、入力端子も合計15と多く、バランスアナログとアンバランスアナログの入力・出力端子、一般的なデジタル入力端子、北米のメーカー好みの12ボルトトリガー出力などがそろっています。RJ45イーサネットのコンセントまであり、今後ソフトウェアのアップデートができるようになったらプリアンプが直接コンテンツをストリーミングできるようになります。このような3つの出力端子は2チャンネルプリアンプには珍しいものですが、1チャンネルあたり2台のパワーアンプに加えてサブウーファーを1台どころか3台までを使うことができるのです。

入力と出力のすべてを構成するオプションがあるため、ひとつの入力をユニティゲインにして、接続したサブを使い、残りはメインの2チャンネルを使うことができます。入力には名前を付けて一定量のゲインやバランス設定の両方、またはいずれか一方を割り当てることができます。これほど構成が可能で自由自在な2チャンネルプリアンプが果たして他にあるでしょうか。このような機能は明らかにマルチチャンネルプロセッサーのものです。

iPhoneやiPadはもちろんのことNanoやClassic、Touch など人気デバイスの大半のバージョンで使えます。この情報はiPodユーザーには朗報でしょう。

電話というよりもノートPC

オリジナルのディスクをS/PDIFを経由してそこそこのCDプレーヤーで再生するよりも、慎重にコピーしたCDをコンピュータで再生する方がサウンドが優れています。正直なところその差はかなりのものです。ファイルの方が細部まで忠実ではるかに興味深い音楽を再生します。例えば、ピアノソロのライブの場合、楽器が名器であるため、そして音響のスケールと特質が忠実に再現されているため、強烈な説得力があり、臨場感にあふれています。

S/PDIF入力端子はUSB入力のサウンドの良さを引き立てるために存在しているのでしょうか?それはおそらく見当違いです。特に、基準となるDAC/プリアンプのUSB入力(Resolution AudioのCantata)と比較すると、サウンドがほぼフラットです。クラークはUSB入力で確実に素晴らしい仕事を成し遂げ、このジャンル全体の水準を上げました。

アナログ信号のプリアンプのCP-800 には隠れた秘密があります。その秘密の扉を開けて最大の可能性を明らかにしましょう。秘密とは「アナログバイパス」チックボックスです。簡単そうに聞こえますが、捜し出して、各アナログ入力と照合する必要があります。そうしないと、DSP(デジタル信号処理)が邪魔をしてパフォーマンスが低下します。この仕分けが行われていると、アナログ信号は一貫性のある調和された形で再生され、奥行きと幅を持った素晴らしいイメージが広がります。また、低音の伸びとアーティキュレーションも素晴らしく、速さはベストとは言えないものの、なかなかの深みがありしっかりしています。プレゼンテーションは、ミッドバンドに重点を置くものよりもスムーズかつ明快で、真空管プリアンプのように透明感の高い印象を与えますが、ソリッドステートデバイスのスタイルにありがちなドライでもないし、細かいグレインもありません。


CP800-2クラッセにはフォノステージはありませんが、Trilogy 907のような優れた外付けフォノステージの素晴らしさを前面に出すことはできます。スティービー・ワンダーの「スーパースティション」は低周波数のエネルギーが大きすぎて多少落ち着かない感じもありますが、CP-800は万事うまく処理し、極めて重要なファンクのパワーが部屋にあふれ出ます。また、格下のコンポーネントでは隠されていることが多い多層化でのプレゼンテーションが細部まで克明です。パワーアンプはD’Agostino のMomentumを使っていましたが、それでもサウンドの音質とスケールは豊かで深みがありました。

フロントのUSB入力端子からiPod Touchを再生すると、従来型の音源基準によりそぎ落とされたサウンドが再生されますが、グレインがなく、力強く、澄みわたり、歯切れが良く、文句の付けようがありません。クラス最高とは言えないまでも、もっと上位のデジタル機種と肩を並べる音質です。iPhoneは試してみませんでしたが、CDよりパフォーマンスが優れていたら、審査員はその首を差し出すことになるでしょう。

可能性を生かせるさまざまな方法を評価するサブウーファーは付けませんでしたが、音質調整を試してみました。音質調整は、ティルト装置ala Quadとして動作するように工場で設定され、微妙ながらもその効果ははっきりと分かります。これも信号処理では初めてのことです。

また、イコライザー(EQ)のオプションも検討し、自分の方向性の正しさを確認するきちんとした測定機器が必要であることに気付きました。フィルターのオプションはチャンネルごとに5つあり、そのそれぞれが中心点、水準、Qを調整できます。低音を抑えたい場合には役に立ちますが、そのままのバランスで満足ならばそのままにしておくのがベストです。

やる気満々

マルチチャンネルプロセッサーの威力が内蔵され、機能が大変充実しているプリアンプ です。この部分に製造予算のかなりを投じなければならなかった関係上、速度面では市販品で最速とは言えませんが、コンピュータから得られる信号は、まさにこれまで見たことのないように見事です。

傑作だけれどもレコーディング状態が悪いアルバムの音質バランスを微妙に調節できるだけでなく、チャンネルごとに部屋のバランスを整えることができ、いつまでも古臭くならないプリアンプをお探しの方に最適です。


Q&A

クラッセ・オーディオの技術責任者アラン・クラーク(AC)にCP-800について聞きました。

CP800-3HFC:CP-800に搭載されている機能の数や性質から、2チャンネル用に改良されたマルチチャンネルプロセッサーという印象を受けるのですが?
AC:いいえ、そうではありません。CP-800は全く新しいデザインのものです。目指したのは、アナログやデジタルの幅広い音源の素晴らしいサウンドを聞いていただける最先端の2チャンネルプリアンプを開発することでした。

アナログ信号は、プリアンプを通るときにA/DとD/Aを通るのですか?
ユーザーがどのような機能を必要とするかによって異なります。CP-800を従来の2チャンネルのアナログプリアンプ(入力の選択、音量とバランスの調節)として使用する場合、オーディオはアナログのままで、デジタルオーディオのサブシステムの電源は切られた状態です。アナログの各入力は、必要に応じてアナログバイパスに設定してこの機能をロックすることができます。音質調整やルームイコライザーなどDSPモードが必要な場合、アナログオーディオはDSPが必要な機能を実行する前にデジタル変換され、その後アナログオーディオに戻ります。

S/PDIF接続よりもUSB入力の方が優れているとおっしゃいますが、その理由は?
S/PDIFが25年間これほど成功しているのはシンプルで関連コストが安いというのが理由のひとつですが、これを可能にしているのが、データと関連タイミングをひとつの導体に同時転送する機能です。この自動クロッキングトポロジーでは、受信装置がクロックを抽出し、それを使ってデータの受信の同期化およびデジタルからアナログへの変換ステージを促進する必要があります。受信機は、変換プロセスに存在する好ましくないアーチファクト、つまりシステムに入ってくるS/PDIF信号、ジッター、ノイズ、周波数変動をロックします。

アシンクロナスUSBは反対方向に働きます。データとタイミング(クロック)をDACの方に押しやるのではなく、受信機(CP-800)内に発生するクロックを使ってデータをPCやiPodから取り出します。そのため、アナログ変換される前に最大限正確にオーディオデータを同期化することができます。


システムの構築

クラッセは音源のコンポーネントをもう作っていないことから、販売代理店であるBowers & Wilkinsは、このプリアンプの必然的な相棒をノートPCに決め、数ある中から、常に優れた結果を出しているブランドAppleを選びました。

MacBook Proは、さまざまな外観のものがありますが、いずれも、所有する楽曲数に応じて内蔵または外付けのハードドライブを使って音楽ソフト Pure Musicが使えます。直接CP-800のUSB端子と接続すれば、クラッセシリーズから2台のステレオ・パワーアンプを選ぶことができます。

最も手ごろなのはCA-2100です。CA-2100という名称は、出力100ワット×2ということです。さらに出力をアップしたいときは、CA-2300がパワーを提供しますが、B&Wが推奨しているように、Diamondシリーズの最も手ごろなスピーカー(805)と組み合わせればちょうど良いサウンドをお楽しみいただけます。

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